高松高等裁判所 昭和28年(ネ)455号・昭29年(ネ)33号 判決
控訴人は、被控訴人に対し金一万六千三百九十七円及びこれに対する昭和二十七年二月二十二日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払うべし。
被控訴人その余の請求を棄却する。
訴訟費用(附帯控訴費用を除く)は第一、二審を通じ被控訴人と控訴人との平分負担とする。
(二) 附帯控訴は、これを棄却する。
附帯控訴費用は附帯控訴人(被控訴人)の負担とする。
二、事 実
控訴並びに附帯被控訴代理人は、控訴につき、原判決中控訴人敗訴部分を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする旨、附帯控訴につき、これを棄却する旨の判決を求め。被控訴並びに附帯控訴代理人は、控訴につきこれを棄却する旨、附帯控訴につき、原判決中附帯控訴人(原告)の請求を棄却した部分を取消す、附帯被控訴人は附帯控訴人に対し金四千二百十七円及びこれに対する昭和二十七年二月二十二日以降完済に至るまで年五分の割合の金員を支払うべし、附帯控訴費用は附帯被控訴人の負担とする旨の判決を求めた。
当事者双方の主張する事実関係は、それぞれ左のとおり補正する外孰れも原判決摘示の事実と同じであるから茲にこれを引用する。
被控訴並びに附帯控訴人(以下単に被控訴人と指称し又控訴並びに附帯被控訴人を単に控訴人と指称する)において「被控訴人は、法人でない社団であつて庁長がその代表者と定められてある。略本暦の頒布とは売渡である。二十五年度略本暦関係につき、控訴人抗弁の前払金二千五百円及び抗弁の如き送金七千二十円による弁済を認める。二十六年度略本暦関係につき、控訴人抗弁の如き送金一万五千円による弁済を認める。二十五年度神宮大麻関係につき、被控訴神社庁は愛媛県下の神社に関する団体であるところ大麻の頒布は神社本庁からの委託によつて行うものであつてその実行方法は右団体の組織機構を利用し被控訴神社庁において県下各郡市に設けてある各支部からの報告に基き当該支部管下神社の所要頒布見込み合計数を取纏めその総数を神社本庁に通知しそれに相当する数量の大麻が被控訴神社庁に送付される、そこで被控訴神社庁は、頒布に関する祭式の儀を経て各支部に対し前記所要数を送付し、支部も亦同様祭式の儀を経てその管下各神社に対し所要数を配付する、茲において神社の神職は該大麻をこれを希望する神宮崇敬者に頒布するに至るのであるがその際古来の例にならい崇敬者が初穂料と称して所定の金銭を任意神社に納めるから神社神職において所定の頒布費換言すれば手数料を控除した上頒布した大麻の数により積算した金員を所定の時期までに支部長え送付し、支部長も亦各神職から送付された初穂料から所定の頒布費を控除した上頒布数により積算した金員を所定の時期までに被控訴神社庁に送付するの方法によるのである従つて支部長、神職等は被控訴神社庁なる団体内部における分担事務の執行者であるから受任者に準ずべきものとして頒布の事務を執行するものであるが大麻の頒布を受けた崇敬者から初穂料を収受したと否とに拘らず被控訴神社庁から送付を受けてその頒布を引受けた数量(送付を受けた数から所定の時期までに不要のものを返還した数を除いた残数)に応じ積算した額を被控訴神社庁に送付すべき責に任ずる旨の約定がありまた従来の慣例とするところでもある。しかして控訴人は被控訴神社庁の新居郡支部の支部長であるから叙上関係における受任事務の執行者としてかつ右初穂料送付約定により被控訴人主張の初穂料を送付すべき義務がある。控訴人から昭和二十五年三月十五日被控訴神社庁に対し大麻二百体(その初穂料合計金三千百円)を返戻されたこと、並びに八千百八十三円神宮司庁宛送金により弁済されたことを認める。また初穂料送付の義務は上叙の如く団体内部における分担事務執行者として該受任事務の処理に関する契約上の責任であるから控訴人の主張するが如く大麻そのものに対する対価の支払いではない。又大麻は古来から普通一般に財貨のように取扱われるものでない、従つて大麻の頒布と初穂料の授受との関係も一般の国民感情において売買と観念せず古来より伝統を有する特殊な宗教的行為と認められて来たものであり該授受に何等公序良俗に反するところはないとされているものである、恰も僧侶、牧師その他宗教師の宗教上の行為に対し授受される金品が一般に対価視されず又その授受が公序良俗に反するものでないとされているのと同様である。仮りに大麻と初穂料の授受が対価関係がありかつそれが売買となるとしても、大麻はそれを通じ伊勢神宮の神霊を竭仰崇敬するため一つの目安として用いられるものである、然るにこれと同様な仏教における仏像、キリスト教における十字架等が巷において売買されているを世人の怪まないのに徴しても大麻の売買が公序良俗に反しない程度に社会の民心も現代化したものと言うべく公序良俗違反を論ずる余地なきに至つたと做すべきである。控訴人が初穂料送付の責を履行しないので裁判上の方法によりこれが強制履行を求め得ること当然である。」と述べた。
控訴並びに附帯被控訴人において「返還したと抗争する二十五年度略本暦五百三十五部及び同年度大麻四百七十四体は孰れも昭和二十五年一月頃から同年三月二十九日までの間二、三回に返還したものの合計である。略本暦の頒布が売買であること、大麻初穂料につき被控訴人主張の如く頒布数に応じ積算した額を送付すべき約定がありそのような慣例であることは孰れも認める。略本暦の代金や初穂料を被控訴人に支払わないで直接神社本庁又は神宮司庁(但し二十五年度略本暦関係に「伊勢神官」とあるのを「神宮本庁」と訂正する)に宛て送金して弁済したことについては、孰れも被控訴人の承諾を得て居る。本件大麻の頒布は民法第九十条に所謂公序良俗に反し無効である、又該頒布の履行を強制することは日本国憲法第二十条第二項に違背しかつ公序良俗にも反する、即ち大麻の初穂料とは大麻と称する神符を受ける者が神恩を謝する意味において神社に寄進するものである、従つてその自由意思により自発的に定められるべきものでなければならない、然るに被控訴人の主張自体により明らかなように被控訴人と控訴人との間における本件大麻頒布に関しては「初穂料一体につき十五円五十銭」と定められているから寄進者が決める以前、頒布者において既にしかも一方的にそれを定めているだから寄進者の意思とは全く遊離し一定の単価により授受するものであるから大麻は一個の商品と化したものと言うべく初穂料も定額とすることにより対価代償となるに至つたことが明らかである、故に大麻の頒布なるものはひつきよう大麻の売買にほかならない。そうでないとしてもそれに準ずべき無名の有償行為である。斯くの如きは神の恩寵を売物とするもので世界共通の宗教的理念に背むき善良の風俗に反し無効と言わなければならない。又大麻頒布は宗教上の行為をなすことを内容とするものであるから仮令自由意思により契約したとしても法律によりその履行を強制されない、ところでそれが被控訴神社庁とその傘下の支部長、神職との間におけるもので一般崇敬者の関与しないものであるが右支部長等において履行を強制されるとすれば傘下の神職惹いては崇敬者より初穂料を取立て送付しなければならなくなり結局末端の一般崇敬者に初穂料の支払いを強制するの結果を必然的に伴うこととなるから日本国憲法第二十条第二項に反し所謂宗教上の行為を強制されるに至る、のみならず本訴により右頒布の履行を請求することは判決を得て強制執行をし、よつて控訴人の僅かな所有物の競売により得た不浄な金員を初穂料として神前に供えることとなる、斯くの如きは初穂料の性格にももとることが明らかである、かように本訴請求は公序良俗に反する。だから孰れの点よりするも該請求は失当である。」と述べた。
<立証省略>
三、理 由
被控訴人が法人でない社団であつて庁長がその代表者と定められておることは記録添綴の神社本庁統理鷹司信輔の証明書及び原審における被控訴神社庁代表者本人尋問の結果に徴し明らかである。
第一、昭和二十五年度略本暦の関係について、
被控訴神社庁が昭和二十四年八月十四日頃控訴人に対し被控訴人発行昭和二十五年度略本暦千部を、代金一部につき金十五円五十銭の約定により売渡したことは当事者間に争いがないし成立に争いのない甲第一号証、原、当審証人横田佐太郎の証言により成立を認められる甲第二、五号証原審証人長曾我部勝の証言により成立を認められる甲第三号証の一、二第四号証、当審証人谷本賀文の証言により成立を認められる甲第十一号証を綜合すると、更らに同年八月二十二日頃前記略本暦二百部を代金右同様の約定で売渡したことも認められる、この認定に反する原審における控訴本人の供述は信用し難く他にこの設定を妨げる証拠はない、そうすると右代金の合計は金一万八千六百円となることが明らかである。
ところで被控訴神社庁において右代金の前払として金二千五百円を受領したことを自認する。又控訴人が被控訴神社庁の承諾を得て右代金支払いのため昭和二十六年五月頃金七千二十円を、神社本庁え送金して弁済したことは、当事者間に争いがない。控訴人は、それ以外昭和二十五年一月頃から同年三月二十九日に至るまでの間二、三回に右略本暦中から合計五百三十五部を被控訴神社庁に返還したと抗弁し、乙第二号証前示証人横田の証言及び控訴本人の供述がそれを裏付けるかのようであるけれども飜つて前示甲第一、五号証前示証人長曾我部及び谷本の証言により成立を認められる甲第六号証、原審証人中矢長守、原当書証人奥村良華及び右長曾我部、谷本各証人の証言並びに右横田証人の証言の一部を綜合すれば、右乙第二号証は、被控訴神社庁の職員であつた訴外中矢長守が退職後に在職中何等返戻を受けた事実がないに拘らず控訴人より送り返したからと言つて領収証の作成を頼まれ、その言の儘に作成したものであること、被控訴神社庁の関係簿册にその返戻の記載がないに反し返戻のあつたもの例えば昭和二十五年三月十五日大麻二百体返戻の如きはその記載があること。並びに被控訴神社庁の会計経理事務を調査整理した訴外横田佐太郎も控訴人から抗弁の如き返戻が存しないとして計算し(即ち甲第五号証において、前認定合計代金一八、六〇〇円から前記前払金二、五〇〇円を差引き未納金一六、一〇〇円としている「又二四年度暦とあるが二五年度であること右横田証人及び当審証人野上正篤の証言により明らかである」)未納金を請求していることがそれぞれ認められるに比照し右乙第二号証の記載は横田証人及び控訴本人の供述とともに遽かに信用できないし他に該抗弁事実の認められる控訴人の立証はない。
そうすると、控訴人は以上差引き残代金九千八十円の未払いがあることとなる。
第二、昭和二十六年度略本暦の関係について、
被控訴神社庁が昭和二十五年七月一日頃控訴人に対し前同様昭和二十六年度略本暦千部を、代金一部につき金十五円の約定で売渡したことは、当事者間において争いがない、だからその合計代金一万五千円となる。
ところで控訴人が被控訴神社庁の承諾を得て右代金支払いのため昭和二十七年二月頃金一万五千円を伊勢神宮え送金して弁済したことも被控訴神社庁において認めるので右代金は支払済である。
第三、昭和二十五年度神宮大麻の関係について、
被控訴神社庁が昭和二十四年中控訴人に対し昭和二十五年度神宮大麻千二百体を、初穂料一体につき金十五円五十銭として頒布のため送付したことは、数量の点を除き控訴人の認めるところであるし数量が千二百体であつたことは前示甲第一号証及び証人横田、中矢の各証言により明らかである。
成立に争いのない甲第八号証、前示証人奥村、横田、谷本及び当審証人野上正篤の各証言、前示控訴本人の供述と弁論の全趣旨とを、綜合すれば、被控訴神社庁は、前認定の如き団体であるがその事務の執行につき被控訴人主張の前記事実に摘示の如き下部機構を有する、それで神社本庁から委託される神宮大麻の頒布並びにこれが初穂料の収受等も亦右被控訴人主張の如き経路方法により支部長、神職に分担させてこれを執行して来たこと、控訴人は被控訴神社庁傘下新居郡支部の支部長であり同神社庁の行う昭和二十五年度神宮大麻頒布事務の分担者として該頒布事務処理のため右認定の如く大麻の送付を受けたものであることを認めることができる。然らば右大麻頒布とは、控訴人が被控訴神社庁なる団体の内部機構における支部長として団体事務を分担執行する任務を有するものであつて受任者に準ずべき関係に在るものと言うべく被控訴神社庁の委託により右大麻頒布事務を受任したものとなすべきである。控訴人が大麻の頒布は大麻の交付を受けるに対し所定額の初穂料を支払うのであるから売買乃至はそれに準ずる有償行為であると言うけれども、上叙認定のように本件被控訴神社庁とその傘下支部長たる控訴人との団体の内部機構相互間における分担事務執行として控訴人は被控訴神社庁から頒布方の委託を受けて送付を受けた大麻を管下の神社(神職)を経由して神宮の崇敬者に頒布しその取扱に係る大麻の数量に相当する初穂料相当額を被控訴神社庁に送付するのであるからその間には対価又は代償と言うが如き関係は存しない(被控訴神社庁の帳簿等の記載に対価代償であるかのように思われるものがあるが経理計算の形式上已むを得ないものであること経験上明らかであり上叙結論に影響しない)、のみならず大麻と初穂料との授受は、我が国においては古来から特殊な宗教的行為として一般に行われているところでありその間において大麻を財物視したり初穂料を対価、代償視したりして授受されるものでない勿論売買乃至はそれに準ずる有償行為とされないのが国民一般の常識である、以上の結論は、初穂料が定額となつていることにより影響されるものでない、他にこの認定を覆すに足る控訴人の立証はないのでその主張は失当である。
しかして前示甲第八号証及び証人横田、中矢の各証言を綜合すれば、支部長等が大麻頒布の委託を受けた場合、不要その他の事由で返戻をしようとするものがあるときは、毎年二月末頃までに被控訴神社庁に返戻しなければならない定めであつたことが認められる。又右支部長等においては、頒布のため送付を受けたものから上叙返戻したものを差引いた頒布引受数に応じ積算した額の初穂料を送付する責に任ずる旨の約定があり従来の慣例もそうであることは当事者間に争いがない。
ところで被控訴神社庁において、控訴人から昭和二十五年三月十五日頃大麻二百体の返戻を受けたことを自認する。控訴人はそれ以外昭和二十五年一月頃から同年三月二十九日に至るまでの間二三回に右大麻合計四百七十四体を、被控訴神社庁に対し返還したと抗弁し、乙第二号証、前示証人横田の証言及び控訴本人の供述がそれを裏付けるかのようであるけれども信用できないこと前昭和二十五年度略本暦返戻の抗弁につき挙示の証拠により説明したとおりの事情が認められる(但し甲第五号証において前記返還したこと争いのない二百体を差引いた千体分の初穂料金一五、五〇〇円を未納金としてある「又二四年度とあるが二五年度であることは前同様」)から茲にこれを引用する。
そうすると、他に猶返戻したものがあるとの主張及び立証の存しない本件では、控訴人は、前認定頒布の委託を受けた大麻千二百体の内返戻した二百体を差引いた残千体の頒布を引受けたものと做さるべきものと言わなければならない、従つて約旨によりそれに応じ積算した初穂料合計金一万五千五百円送付の責務があつたのである。
然るに控訴人が被控訴神社庁の承諾を得て右初穂料として昭和二十六年五月末頃金八千百八十三円を伊勢神宮え送付の方法により弁済したことは、当事者間に争いがない。
それで控訴人は、差引き金七千三百十七円の初穂料を送付すべき計算となるのである。
ところが控訴人は本件大麻頒布の約定は、公序良俗に反し無効であり又該約定により本訴請求をすることが憲法違反、公序良俗違反となるので本訴請求は失当である旨抗弁するけれども本件頒布約定は、売買でなく前認定のように、控訴人が被控訴神社庁なる団体の内部機構における支部長として団体事務を分担執行する地位に在るものとしてなすのであるから受任者たる関係にある、元来受任者として該受任事務処理により収受した物即ち初穂料を委任者たる被控訴神社庁に引渡す法律上の義務があることは勿論であるが前認定の如く大麻の頒布を受けた崇敬者から現実に初穂料を収受したと否とに拘らず、控訴人は被控訴神社庁傘下の支部長として被控訴神社庁から送付を受けその頒布を引受けた大麻の数に応じ積算した初穂料相当額の金員を被控訴神社庁に送付する責に任ずべき旨の約定をしたものである(のみならず従来かような慣例も存する)から全く控訴人の自由意思に由来することが明らかである、又初穂料の定額は、前示野上証人の証言により全国各地の崇敬者が貧富の別なく、しかも簡単、安易に寄進し得られるようにし、もつて希望に応じ容易に大麻を奉戴し得られるようにするため考案され、そして該趣旨に則り極めて低額に定められて数十年来行われているものであることを認められる。この認定に明らかなように頒布を希望する崇敬者にのみ頒布するもので希望の有無を問わず一般に頒布するものでない、又希望さえすれば、誰れでも容易に寄進し得る程度の低額のものであるから安易に奉戴し得られる便利と自由とがあるから窮局においても崇敬者の自由意思が毫も阻害されるところはない。尚大麻の頒布と初穂料の寄進とは前認定のように我が国に古来から行われて来た特殊の宗教的行為及びそれに関連する所為であり恰も僧侶、牧師その他宗教師が祭葬等の宗教的行為を司掌した際受けることのある金品と同様のものである、だから該大麻頒布並びに初穂料寄進は宗教的行為として一般に認められておるものであり何等公序良俗に反するものでないとされているものであること明らかなところである。
次ぎに上来の説明により自ら明らかなように、控訴人の初穂料支払義務は、右大麻頒布並びに初穂料寄進なる受任事務の処理に関連しその寄進を受け又は送付を受けた者が該初穂料を集計し送付する旨その自由意思により約定したによるものでありそれが宗教上の行為に関連するところがあるけれども宗教上の行為自体ではない、憲法第二十条第二項は、宗教上の行為自体を強制されない趣旨であるから宗教上の行為でなく、只それに関連を有するに過ぎない初穂料相当額の金員の支払等をなす所為まで拘束するものでないと解するを相当とする、故に訴訟によりこれが強制履行を求めても右憲法の規定に反するものと言うことはできない。もし控訴人抗弁の如く云々することが許されるならば、そうすることにより初穂料の寄進を受領し又はその集計送付を受けた者において、該初穂料により私腹を肥やしながら受任者として自己の負担する履行の責を免かれるに至るの結果となり却つて崇敬者の意思に反し社会一般の正義観に背くものといわなければならない。従つて被控訴神社庁が控訴人に対しその強制履行を請求するのを目して公序良俗に反するとは言えない、又該履行の強制により右約定に何等関係の存しない崇敬者を強制するに至るの結果を生ずることのないことも明らかであるから憲法に抵触するところもない。以上の次第で右抗弁は孰れも採用できない。
以上説明のとおりであるから控訴人は被控訴人に対し合計金一万六千三百九十七円及びこれに対する訴状送達の翌日であること記録に徴して明らかな昭和二十七年二月二十二日以降完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべきである。だから原判決中被控訴人の請求を認容した部分は上叙の限度で相当であるがその余は不当であるからこれを変更する。従つて原判決中被控訴人の請求を棄却した部分も相当であるから附帯控訴を棄却するものとする。
よつて民事訴訟法第九十五条第九十六条第九十二条第八十九条に則り主文のとおり判決する。
(裁判官 前田寛 太田元 岩口守夫)